つまらない住宅地の全ての家 津村記久子
を読みました。
読んだきっかけ
何かの雑誌で紹介されていました。
住宅地とか家とかタイトルに入っていると気になってしまうのだ(職業病)
あらすじと感想
とある住宅の各家庭の物語り。袋小路の路地の周りに10件の家が立ち並ぶ住宅地が舞台です。
序盤は住宅地に住む各家庭の家族環境下とか抱える問題なんかが少しずつ紹介されます。それぞれ何か事情を抱え穏やかじゃない家庭も多い様子。フツーに幸せな家庭なのかもだけど、なんか閉鎖的で陰鬱な雰囲気が漂っています。
本文だけではそれぞれの家庭の物理的な位置関係が解り難いんですが、巻頭に住宅地の見取り図と、どんな家族構成なのかが乗っているので見返しながら読み進められました。この見取り図がないと、位置関係の把握にとらわれて物語が頭に入ってこないかも。
とある女性刑務所から囚人が一人脱獄し、その逃亡犯の行き先がその住宅地のある街だと噂になってくる辺りから物語りが動き出して…
その住宅地と近隣やちょっとした関係者の小さいコミュニティでの物語りだけど、意外な人間関係が面白かったですね。他人のようで、登場人物たちがどこかでつながっているというか。読み進めると、あーこういう関係か、とスッキリします。
まあ話にあんまり絡んでこない登場人物も当然いるんだけれど。
登場人物ごとに話が切り替わるし、一つのパート(話)が長くはないので読みやすい小説でした。
エピローグではどの家庭も前向きに進んでいく感じなので、穏やかに読み終われました。陰鬱な住宅地に光がさした感じがします。よかった。
つまらない住宅地のすべての家
著:津村記久子
双葉社